勝負事の美学

勝負事の美学

こんにちは!
幸せ実践塾・塾長の赤木あつしです。

スポーツなど勝負事は、
勝ち負けを争います。

勝てば嬉しいし、負ければ悔しい。

それでも、勝敗を決するのが
勝負事というものです。

この勝負事で勝った時、
ガッツポーズの是非が
問題になることがあります。

サッカーなどでは、
ゴールを決めた時に
派手なパフォーマンスをしますね。

野球でもガッツポーズくらいはしますが、
これに対して苦言を呈する人もいます。

ボクシングでは、
ダウンした相手の目の前で宙返りをして、
ひんしゅくを買った選手もいました。

でも、考えてみると不思議ですね。

そもそも勝敗を決するのが目的なのに、
勝った方が喜びを表現することが
そんなに悪いことなのでしょうか?

このことを考える時、
国技である相撲が参考になるでしょう。

相撲では、
基本的にガッツポーズは禁止です。

「みやざき中央新聞」の今週号に、
過去記事ですが、元NHKアナウンサーの
杉山邦博さんの記事がありました。

杉山さんはこれまで、
2.5人の力士がガッツポーズをしたとして、
その話をしています。

最初は高見山関で、
1500回連続出場をした時だったそうです。

異国から日本へ来て、
しかも日本の伝統に身を投じ、
おそらく想像を絶する苦労をしたのでしょう。

その思いが、
思わずガッツポーズをさせたのだと思います。

2人目は逆鉾関で、横綱隆の里に勝った時、
ガッツポーズをしてしまったそうです。

後で新聞記者と談笑している時に、
協会の事務員がやってきて、
理事長室に寄るよう告げたとか。

「「おまえがガッツポーズした時に
負けた相手がどんな気持ちでいるか
考えてみろ。
ましてや相手は横綱だ、失礼千万だ」と、
逆鉾は理事長から叱られました。

 勝負の最中は対等ですが、
勝負がついたその瞬間、
勝者は敗者の胸中を察して
過ごさなきゃいけない。
「ましてや相手は先輩で、
そのお陰でおまえは強くなれたんだろう。
そんな相手を前にガッツポーズするなんて、
とんでもない」ということです。」

いかがでしょうか?

たしかに、そういう理屈もありますね。

もちろん、純粋に喜びたい気持ちまで
否定するのはおかしい
という考え方もあると思います。

しかし、
これが日本の伝統なのだろうと思うのです。

たとえば、
将棋や囲碁をご覧になった方は、
最初は違和感を感じるかもしれません。

たいてい、
最後まで指したり打ったりはしません。

もう勝てない、
負けがはっきりしたという時点で、
負けた側が「まいりました」と言います。

それで勝敗が決まります。

そして、注目すべきはその後です。

勝った側は、ガッツポーズはおろか
笑顔さえ見せません。

そんなことがどうでもいいかのように、
感想戦に入ります。

つまり、その試合の手合を再現しつつ、
あそこでこうすればどうだったか
ということを相手と一緒に考えるのです。

何が最善手だったかを検討するのです。

その様子を見ていると、
どっちが勝利したのかさえ
わからないくらいです。

表情だけ見ていると、
勝った方がまるで負けたかのような
苦悶の表情を見せたりもします。

まるで、お互いが協力し合って、
最高の芸術を作ろうとしていたかのように
思えます。

そうなのです。

日本の伝統の勝負事は、
実は勝ち負けを争ってはいないのです。

勝ち負けは単に結果であって、
そこに至る過程において
いかに最善を尽くせたかが重要なのです。

もちろん、そんな規定はありませんが、
私はそのように感じます。

だから、
派手なガッツポーズを嫌うのです。

まるで自分だけが素晴らしい
と誇示するように見えるからです。

負けた人の協力がなければ、
素晴らしい試合にはならない
とわかっているからです。

もちろん、
どっちが正しいかということに関しては、
どういう価値基準でも
正しいと思います。

しかし私は、
日本の勝ち負けよりも重要なことがある
という価値観を、
より素晴らしいと感じます。

ちなみに、杉山さんが示した残り0.5人は、
平成4年5月場所で優勝した曙関です

千秋楽で若花田関を寄り倒し、
大関を確定した瞬間でした。

思わず両手を上げて
ガッツポーズをしようとした瞬間、
曙関は躊躇し、その手を降ろして
若花田関に差し出しました。

これは1998年の記事ですから、
朝青龍の話は出てきませんよ。(笑)

大相撲も、随分と変わってきましたね。

勝ち負けより素晴らしいもの。

それは自分がより高みに至ることです。

さらに、
他の人も一緒に高みに至ることです。

それを日本人は「道」と表現しました。

「道」とは、
すべての人が歩んでいくものです。

競うものではなく、
協力し合うもの、助け合うものです。

私は、日本人は直観的に
生きることの意味がわかっていた
のではないかと思うのです。

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赤木篤 (あかき・あつし)


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